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文献紹介3: ニッケル、コバルト、クロムアレルギーと職業の関連性

更新日:2021年1月3日

Nickel, cobalt and chromate sensitization and occupation. Contact Dermatitis. 2010;62(4):225-31.

15000人もの患者にパッチテストを行ってその結果を解析したイタリアの多施設共同の臨床研究。

 

まとめ

金属アレルギーの原因として頻度の高いニッケル・コバルト・クロムは、装飾品からの感作などが知られるようになり、ニッケルは成分制限などがあって感作される機会が減ってきている。

しかし、職業においては、未だに感作される機会が減ってきているとは言えないのかもしれない。


金属別に下記の傾向があった。

ニッケル:若い女性に多く、金属および機械による仕事

クロム:建設労働者で多い

コバルト:女性では繊維および革細工、男性では清掃作業員


 


目的:ニッケル、コバルト、およびクロム酸塩アレルギーの有病率を推定し、個人および職業上の危険因子との関連の可能性を調査する。


患者/方法:アレルギー性皮膚炎が疑われる合計14,464人の患者(67.6%の女性と32.4%の男性)がパッチテストを受けた。パッチテストの結果と職業との関連は、多変量ロジスティック回帰分析によって解析した。


結果:患者の約24.6%が硫酸ニッケルに、10.2%が塩化コバルトに、8.7%が重クロム酸カリウムに陽性反応を示した。ニッケル感作は、26〜35歳の女性で高かった。女性では、ニッケルに対する陽性反応の有病率は、金属および機械的仕事と正の関連がありました(OR 1.54; 95%、CI 1.16-2.05)。クロム塩酸への感作は、女性(OR 1.58; 95%CI 1.00-2.49)と男性(OR 2.24; 95%CI 1.55-3.22)の両方の建築労働者でより多かった。コバルト感作は、女性の繊維および革細工(OR 1.52; 95%CI 1.09-2.12)および男性の清掃作業(OR 1.86; 95%CI 1.18-2.93)に関連していた。


結論:私たちの研究は、いくつかの職業とニッケル、クロム酸塩、コバルトアレルギーとの間に興味深い関連性があることを示した。


 
ニッケル、コバルト、クロム酸塩に対する接触感作は、年齢、性別、地理的および歴史的要因の影響を受ける。
ESSCA Writing Group. The European Surveillance System of Contact Allergies (ESSCA): results of patch testing the standard series, 2004. J Eur Acad Dermatol Venereol 2008: 22: 174–181. 5. 
Schnuch A, Geier J, Uter W et al. National rates and regional differences in sensitization to allergens of the standard series. Contact Dermatitis 1997: 37: 200–209

ニッケル

イヤリング、ジュエリーなどの装飾品に若い女性が暴露され感作されている

携帯電話との皮膚接触後のニッケルアレルギーの報告も増えてきている
Wohrl S, Jandl T, Stingl G, Kinaciyan T. Mobile telephone as ¨ new source for nickel dermatitis. Contact Dermatitis 2007: 56: 113.
Livideanu C, Giordano-Labadie F, Paul C. Cellular phone addiction and allergic contact dermatitis to nickel. Contact Dermatitis 2007: 57: 130–131. 9. 
Thyssen J P, Johansen J D, Zachariae C, Menne T. The outcome of dimethylglyoxime testing in a sample of cell phones in Denmark. Contact Dermatitis 2008: 59: 38–42.

ニッケルは職業性アレルゲンでもある。
Shum K W, Meyer J D, Chen Y, Cherry N, Gawkrodger D J. Occupational contact dermatitis to nickel: experience of the British dermatologists (EPIDERM) and occupational physicians (OPRA) surveillance schemes. Occup Environ Med 2003: 60: 954–957.  
Cherry N, Meyer J D, Adisesh A, Brooke R, Owen-Smith V, Swales C, Beck M H. Surveillance of occupational skin disease: EPIDERM and OPRA. Br J Dermatol 2000: 142: 1128–1134. 
Nettis E, Marcandrea M, Colanardi M C, Paradiso M T, Ferrannini A, Tursi A. Results of standard series patch testing in patients with occupational allergic contact dermatitis. Allergy 2003: 58: 1304–1307. 
 Liden C, Skare L, Nise G, Vahter M. Deposition of nickel, ´ chromium, and cobalt on the skin in some occupations – assessment by acid wipe sampling. Contact Dermatitis 2008: 58: 347–354.

コバルト

女性と男性の両方に影響を及ぼす。

ニッケルとクロム酸塩との共感作がしばしば報告される。
Schnuch A, Brasch J, Uter W. Polysensitization and increased susceptibility in contact allergy: a review. Allergy 2008: 63: 156–167. 
Hegewald J, Uter W, Pfahlberg A et al. A multifacttorial analysis of concurrent patch test reactions to nickel, cobalt, and chromate. Allergy 2005: 60: 372–378

クロム

男性でより頻繁に見られる

セメントまたは皮革の可溶性化合物への職業的皮膚暴露によって引き起こされる可能性がある。
Athavale P, Shum K W, Chen Y et al. Occupational dermatitis related to chromium and cobalt: experience of dermatologists (EPIDERM) and occupational physicians (OPRA) in the U.K. over an 11-year period (1993–2004). Br J Dermatol 2007: 157: 518–522.

 

方法

1997年から2004年にかけて、アレルギー性皮膚炎が疑われる症状または兆候のある合計15,217人の患者に、イタリア北東部の8つの皮膚科または職業医学ユニット(ベルーノ、ボルツァーノ、パドヴァ、ポルデノーネ、ロヴェレート、ロヴィーゴ、トレント、トリエステ)でパッチテストをおこなった。その中から、パッチテストが完全に遂行できなかったり、個人的および職業的反応が見当たらない753人の患者を除外した。パッチテストは、Scanpor®テープのFinn®チャンバーを使用して、ヨーロッパのベースラインシリーズで行った。テストされたアレルゲンにはニッケル硫酸塩5.0%、塩化コバルト1.0%、重クロム酸カリウム0.5%が含まれ、すべてのアレルゲンは背中の上部に貼付し、2日後に除去した。国際接触皮膚炎研究グループ(ICDRG)ガイドラインで、除去後1日後に判定し、 +、++、および+++グレードで陽性とした。


結果

ニッケルとコバルトに対する個人および家族のアトピーと感作の大まかな有病率は、男性よりも女性の方が有意に高かった。 クロム酸塩の感作率は男性のが頻度が高かった。





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